日曜の朝の密かな楽しみ

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≪クウガのリアリズム(3)≫

さらに、もう一つ「固有名詞を使わない」リアリティの素晴らしさは、クウガまわりのテクニカルタームです。

どういうことかというと、例えば、クウガには赤を基本に青・緑・紫の4色の変身形態があって、それぞれに特技と弱点があって相手によって使い分けて闘うのですが、番組サイトによれば各色のクウガには「マイティフォーム」「ドラゴンフォーム」「ペガサスフォーム」「タイタンフォーム」という名前がついています。でも、ドラマの中では五代君本人さえも「青いやつに変身して…」とか「緑の銃を使って…」と素朴に表現していて、この固有名詞は使っていないのです。

偶然クウガになる力を身につけ、潜在的なクウガの機能を試行錯誤しながら闘っている五代君は、戦闘の中で必要に迫られてそれぞれのスタイル(色)に変化していっただけで、名前なんか知るわけがないし、知る必要もないというのは正しい設定だと思います。(しかもその名前たるやいかにもな現代語=英語だし)

したがって、変身するとき「チェンジ、○○フォーム!」とか高らかに叫んだりもしません。…だいたい、人間からクウガへの変身も「変身!」って言って気合いを入れると変化するという感じで極めてあっさりしているし、変身ポーズをやらない回もあるくらい。クウガにおいては変身は見せ物じゃないんですよね。一応、変身ベルトはあるけど、物語上はさほど重要視されてない感じで、私はあのベルトに名前があるのかどうか知りません。

それから、それぞれのキメ技を放つときも「なんとかキ〜ック!!」というようなコールはしない。これは、実際の格闘技やスポーツを考えれば当たり前のことで、解説者が技の名前を教えてくれることはあってもプレイヤーが自分で叫びながらやるなんてナンセンスですよね。 

だけど、技や武器や装備に名前がないと、子どもたちがクウガごっこをやるとき、ちょっとやりにくいかなと、変なところで気になったりして。…だって私たちが子供のころ、仮面ライダーごっこでは「ライダージャンプ!」「ライダーキック!」ってテレビで言ってる通りにやってたもんね。あと、あり合わせの棒とかを見立てて武器にするときにも名前がないと、何のつもりで使ってるのか相手にわかんないですよね。そういう意味でも、クウガは必ずしも子供をターゲットにしているわけではない、ような気がします。

といっても、前述の通りクウガのサイトを見ると一応それぞれに名前がついていて、それから番組スポンサーのバ○ダイさんから、ちゃんとそういう名前の武器やフィギュアが売られています。(ああ、そうか!子供たちはおもちゃについてる名前を見て「ライジングドラゴンフォーム」とか「タイタンソード」とか名前を知るのかな?)

だけど、きっとそれらのネーミングは、おもちゃメーカーさんに対する便宜上のもので、リアリティを重視したドラマには不要なもだという認識が制作側にあるんだと思います。本当は変身ベルトもいらないんだけどな、と思ってたりしないかなぁ…だってクウガの変身は、五代君の体内に取り込まれた「アマダム」という古代の霊石の力による現象であり、ベルトは象徴なのですから。 

結局クウガは、「子供向けのヒーローものだから、おもちゃメーカーさんとのお約束(おもちゃとして売れる小道具を揃えなくちゃいけない)をちゃんとクリアしつつ、物語を安っぽくしないように工夫しているところが、本当に偉いと思うのです。

-「クウガのリアリズム」の項 おわり-

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